サイボーグしばたセレクション2004秋味(at UPLINK FACTORY)

数ヶ月前にはサイしば見たことの無かった少年が、何でこんなに頑張っているやら。
着いたら知り合いがいて、終わって飯に行き。気分良く話を聞き(僕から話すネタはない)、店に宣伝用チラシを置く際の機微を学ぶ。いやはや楽しい。UPLINK FACTORYはとても気分が良い場所で、こじんまりとしてそれがまた僕の気分と合い、今後の上演予定を眺めたりした。
涙もろくなったのか、第二話の俊彦とサチ子のシーンで目頭が熱くなり、それ以上に第六話「小さな恋のバラード!?」では・・・ウルウルと、まるで雅恵のごとく。


この「小さな恋のバラード!?」が他の話と違うのは、柴田が描かれる中心である点だ。他の話は彼女の能力に振り回される人々を描いているのに対し、この話は能力で人を傷つけることで自分の心を傷つけるという話であり、柴田と相手の男しか出てはこない。
相手は冷静な目で見ると醜い男として描かれており、また少女漫画ファンという設定でそれは強められている。そんな相手がいきなり木の上から声をかけてきても、木の上にいたこと自体には違和感を持たない柴田の様子からは、恋は盲目という言葉が思い出される。その恋の過程は十倍という能力で逐一説明されるが、そもそも恋なんてそんなものなのだからと十分な親近感を持って話を追う。
そして、祖父の「思い切りぶつかれ!」という話を真に受け、十倍の力で相手にぶつかる柴田。その誇張に笑いつつも、完全に馬鹿にすることは出来ない、何らかの親近感/既視感を抱く。全身打撲の上三日間の記憶=柴田の記憶が失われるという悲しい結末を向かえ、身体中ギブス姿で公園に佇む彼の後ろからそっと様子を伺う柴田は「ごめんなさい・・・。」と一言呟くが、この言葉には「十倍」も何もつかない。サイボーグとしての能力によって人間としての彼女が傷ついた証拠である。


そんなことを感じて、僕は泣きそうになった。


監督がここで描きたかったことはこの話のタイトルである「小さな恋のバラード!?」からも分かる気がする。少女バラードという架空の少女漫画雑誌から来たこのタイトルは「ポピュラー音楽で、愛などをテーマとする感傷的な歌」という辞書的な意味を暗に示し、この話のサイボーグしばた内における特異性を示しているように思う。
更に言えばこの配役。おおなり監督の公式サイトによると、山田広野という活弁映画監督が相手役。一人己の道を行く妙な魅力を持つこの男をここに配して下さった監督には、数年前の仕事とはいえ、感謝が尽きない。